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家電製品の「なぜ?」「故障?」「どういうこと?」を簡潔に記した管理人の備忘録。ご質問はお気軽に。

大型テレビが必要な時代ではなくなった

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家庭に欠かせない家電製品は様々だが、いつの時代も必需品とされてきた家電製品がある、それがテレビだ。古くは1950年代に「三種の神器」として白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が挙げられる。高度経済成長期には「新・三種の神器」としてカラーテレビ、クーラー、自家用車が挙げられている。いつの時代も日本人はテレビと共に生活をしてきたと言っても過言ではないだろう。消費者が求めれば生産者がそれに応えるようにして日本の家電メーカーは切磋琢磨して素晴らしいテレビを世に送り出してきた。

今のテレビは過剰品質

テレビが普及した1950年代から60年以上経つが、その間にテレビは驚くほど形を変えてきた。テレビが他の家電製品と決定的に異なる点がある。それはハード面の進化とソフト面の進化が必要になる事だ。ハードだけ進化してもコンテンツが無ければ意味がない。コンテンツが進化してもハード面が追従してこなければコンテンツが生かせない。冷蔵庫や洗濯機と異なる設計が必要なテレビだからこそ、特異な進化を続けている。

2017年は遂に有機ELテレビが市場に本格投入される。正直言って液晶テレビの画質はブラウン管テレビに比べ劣っているのは間違いないが、それでも家庭でテレビ放送を楽しむには十分な画質を得られている。まだコンテンツ不足だが、4Kテレビという超高解像度のテレビでさえまだ浸透していないのに、更に色の再現性に優れた有機ELテレビを市場投入するという話だ。

これは正直言って過剰品質になっているのは間違いない。一般的な液晶テレビを普段から観ている一般の消費者が4Kテレビは勿論、有機ELテレビまで欲しているとは到底思えない。費用対効果が得られるのであれば市場でも普及していくと思うが、液晶テレビプラズマテレビがここまで家庭に爆発的に浸透したのは、他に選択肢が無かったという理由と、地デジというコンテンツを強制されテレビを買い替える必要性に迫られたという2つの理由があるからだろう。

もう高級テレビは売れない

だからこそ、今の時代に過剰品質のテレビが売れるとは思えないのだが、僕が個人的にこれ以上高級テレビが売れないと思う理由は別にある。

テレビの大型化、高画質化を訴求する際に最もよく使われるコンテンツは映画だ。色の再現性に関しても最も顕著に画質の違いが現れるのは「暗いシーン」だ。明るいシーンは色の階調が少なくても人間の目にはあまり違いがわからない。逆に暗いシーンは色の階調が多くないと本来見えるべき光景が見えなくなる程影響が大きい。一般的なテレビ放送は暗いシーンより明るいシーンの方が多い。テレビドラマでもそれは同様だ。逆に映画は非常に暗いシーンが多いのが特徴と言える。勿論作品によるが、映画の表現は圧倒的に暗いシーンが多いのは間違いない。色の階調が多く、表現が豊かな高画質テレビを最も生かすコンテンツが映画であるというのはそういう事だ。そして映画は大型テレビとも非常に相性が良いコンテンツだ。だからこそテレビの大型化、高画質化を訴求する際に最もよく使われるコンテンツは映画であり、実際にプロモーションでも良く使われてきた。

2016年VR元年

そこで現在の市場に目を向けると、VRという新しい技術が飛び込んでくる。2016年がVR元年と言われ、本年は更に市場に露出が増えてくるだろう。ヘッドマウントディスプレイの表現力はテレビを軽く凌駕するパワーを持っている。開発されるコンテンツもテレビよりはVR向けのコンテンツに投資するようになるのではないだろうか。

市場を左右するパワーがどこに投資するかで決まるのが映像コンテンツ業界だ。最近生産完了のニュースが報道された3Dテレビも肝心のコンテンツ不足の為、折角の技術が終焉を迎えることになった。消費者の利便性、欲求を追及すると今後は映像コンテンツを楽しむハードウェアは細分化され、より専門性が高まっていくのではないかと僕は予想する。

結論として「大型テレビが必要な時代ではなくなった」と言えるのではないだろうか。