読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

electriclopedia

家電製品の「なぜ?」「故障?」「どういうこと?」を簡潔に記した管理人の備忘録。ご質問はお気軽に。

健康調理家電というマーケットを作ったシャープ物語

f:id:ad-orange:20170202232349j:plain

ここ数年進化を続けるだけではなく、新たなマーケットを創造した家電業界の新カテゴリーといえば調理家電だ。次々と新技術、新発想の元、健康調理家電という新たなカテゴリーが生まれたのだ。

健康調理家電というカテゴリーを創り出したのはシャープであると僕は今でも思っている。シャープが作り出した健康調理家電の代表と言える、ウォーターオーブンヘルシオに焦点を当ててみる。

2004年健康調理家電はヘルシオから始まった

今はもう他国の電機メーカーになってしまったが、シャープの調理家電チームが生み出したウォーターオーブンヘルシオ

温め機能のレンジ機能、熱風で焼くオーブン機能、ヒーターで焼くグリル機能という3つの機能が一体化したオーブンレンジというカテゴリーの中に突如登場したヘルシオはオーブンレンジの代わりではなく、全く別の使い方をして欲しいというメッセージが込められた新商品だった。

新しいオーブンレンジかと思っていた業界が見事に肩透かしを食らったその驚くべき仕様にメッセージ性が強く込められている。初代ヘルシオには「レンジ」機能が付いていなかったのだ。オーブンも温めも全て「加熱水蒸気」と呼ばれる400度近い水蒸気で行うその仕様に驚かされる。

「正直これでは売り辛い。」

と、恐らく全ての家電店の店員は思った事だろう。普通なら3分もあれば十分におかずの温めが出来る電子レンジに比べて、ヘルシオは水蒸気の過熱から始まるので10分は優に超えてしまう。正直これでは売れない、と誰もが思った事だろう。そしてシャープの営業にこう言った事だろう。

「これじゃ、売れないよ」

と。 しかしシャープの営業は全国で勉強会を大々的に開催する。教育というより説得に近い、いや洗脳に近い勉強会だったかもしれない。時にはATOM隊と呼ばれる特殊チームを派遣して勉強会を開いて店員を教育して回る。

話は逸れるが、このエネルギッシュなスタイルこそ僕はシャープの象徴だったと思う。財産と言っても良いかもしれない。液晶テレビアクオス(発売当時はウィンドウ)が当初市場を圧倒していたのも製品が優れていたのもあったが、やはり全シャープの営業が足で回って教育したからこそ、店員がアクオスファンになり、マーケットを制覇出来たと思う。シャープの持っていた財産は、液晶パネルの技術ではなく、オンリーワン商品を開発する開発陣と、明らかに他社と異なり泥臭く営業を行う営業マンであったのは間違いない。

こうして教育された店員達は皆、レンジなんていらない、健康の為に不要な油を落とすにはやはり加熱水蒸気だ、同じ温めでも健康に良い方がいいに決まってる、と。

初代ヘルシオは店舗により売れる店、売れない店がはっきり分かれる製品となった。シャープの営業の「営業力」が左右したのだろう。そして余熱覚めぬまま2世代目が発売となる。

遂にヘルシオにレンジ機能が搭載!

全国の家電店員は裏切られたと思った事だろう(笑)。ヘルシオ黎明期にはこのような裏話がありながらも着実に健康調理家電というマーケットは成長を続ける。発売当時10万円近くしたヘルシオも今は安くなった。

2013年ノンフライヤーで花開いた健康調理

ヘルシオ登場から9年。更に油を使わない事に特化した製品がマーケットに登場する。フィリップスのノンフライヤーHD9220だ。一つの機能に特化した製品であるため万民受けする類の製品ではない。その為、多額のリベートが発生するそのプロモーションに全国の家電量販店は発売前から予約競争を始める。

「正直家族で使用するには小さいんじゃないか」 という意見を押し殺し、ノンフライヤーは記録的ヒット商品となった。それまでフライヤーという製品は調理家電にもあったが、小型で単に揚げるだけの製品に過ぎなかった。このフライヤーというカテゴリーと健康というキーワードをマッチングさせてノンフライに特化した製品として発売し、プロモーション手法も成功を収めたのが成功の要因と言えるだろう。

その後は各社類似商品を発売し、健康調理家電というカテゴリーは成熟の時を迎えることとなる。

今後のマーケット創造

今後はどのような製品がマーケットを作るのだろうか。どのようなプロモーションが行われるのだろうか。家電に求められる性能は当然利便性であることは間違いないが、シャープのヘルシオが作った流れが10年で一大マーケットに進化するのを見て楽しみが広がる。願わくばそのムーブメントの始まりが日本発であれば家電に携わった仕事をしてきた僕としては嬉しいのだが。