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ベクトルを間違えると駄目な話<三洋 排気レス掃除機>

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掃除機は空気とゴミを一緒に吸い込む機械だ

掃除機は空気とゴミを一緒に吸い込む機械だ。そんなことは言われなくても知っていると言う人は多いだろう。空気を吸い込むのだから、空気を排出しなければならない。そんなことは誰でも知っているだろう。

紙パック式の掃除機はゴミが層になってしまい、空気がゴミの層を通過して排気として放出される。だから紙パック式の掃除機は紙パックにゴミが溜まると排気が汚くなる。

業務用掃除機で一般的なフィルター式掃除機も同様だ。内部フィルターにゴミが溜まると吸い込んだ空気はゴミのフィルターを通過して排気として放出される。当然、内部にゴミが溜まっていると排気も比例して汚くなる。

サイクロン方式の誕生

ゴミの層を空気が通過するから排気が汚い。これでは掃除機を使っても意味がないと考えたダイソン氏は排気をキレイにしようと考えた。考えた結論がダストカップ内で空気とゴミを遠心分離して排気ではなく、きれいな空気として排出するという方式だ。彼はこれをサイクロン方式と呼んだ。遠心力を利用してダストカップ内で竜巻のような空気の流れを作り出した。これこそが正常な思考であろう。

今ではサイクロン方式の掃除機は、掃除機内で一定のシェアを持つようになった。紙パック式、サイクロン式、業務用、ロボット掃除機とカテゴリー分けされるまでに成長した。もっとも、厳密なサイクロン方式は大手メーカーではダイソンくらいで日本では紙パックレスの掃除機をサイクロン式と呼ぶようになってしまったが。

排気循環式掃除機

さて、日本の電機メーカーでも掃除機の排気が汚いので新しい発想の掃除機を考え出したメーカーがあったことをご存じだろうか。

そのメーカーの名は三洋電機という。今はパナソニックとアクアに事業を譲渡する形になってしまったが、末期でも家庭用充電池とデジカメ生産では世界的なシェアを誇ったメーカーだ。

三洋の考え出した結論は、排気が汚いなら排気を出さなければ良いという斜め上の結論だった。しかし、冒頭でも申し上げたが、掃除機とは空気とゴミを一緒に吸い込む機械だ。吸い込んだ空気は何処かに放出しなければならない。

三洋はどうしたのか。答えは空気を吸い込むヘッド部から排気を放出するという事だった。掃除機内部で空気を回して最終的にはヘッド部から出すという。そんなことが可能なのかというと製品だけを見る限り可能であった。若干本体から排気が出てはいたがほとんど排出されてはいない。ヘッド部の先端から排気が出ているのは正直凄い発想であり、技術力だと思う。

ベクトルの方向が違う結果

ただ一つ言えることは、「本来、空気を吸い込む個所から空気をだしてしまうと、吸引力が著しく弱い」という掃除機にとっては致命的な構造になっていたことが言える。

なぜあのような製品をマーケットに出したのか。そんな三洋が僕は大好きだ。

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